「プーと大人になった僕」感想レビュー:最近”何もしない”をしていない大人にオススメ

何もしないは最高の何かにつながる




映画「プーと大人になった僕」を観てきました。
タイトル通り、プーさんの物語から何年も経ち、主人公の男の子、クリストファーロビンが結婚をし、子どもを持つ大人になっています。そこで子供の頃ぶりにプーさんを初めとする100エーカーの森の仲間たちと再会するのですが、大人になり、行動も考え方も変わってしまったクリストファーロビンは彼らとどう向き合うのか・・・仕事に忙殺されている大人にオススメの映画です。

プーと大人になった僕:あらすじ

少年クリストファー・ロビンが、“100エーカーの森”に住む親友のくまのプーや仲間たちと別れてから長い年月が経った──
大人になったクリストファー・ロビンは、妻のイヴリンと娘のマデリンと共にロンドンで暮らし、 仕事中心の忙しい毎日を送っていた。ある日クリストファー・ロビンは、家族と実家で過ごす予定にしていた週末に、仕事を任されてしまう。会社から託された難題と家族の問題に悩むクリストファー・ロビン。そんな折、彼の前にかつての親友プーが現れる。
プーに「森の仲間たちが見つからない、一緒に探してほしいんだ」と頼まれたクリストファー・ロビンは、子供の頃プーたちと過ごした“100エーカーの森”へ。何一つ変わらないプーやピグレット、ティガー、イーヨー、カンガとルーの親子。仲間たちとの再会に喜びと懐かしい日々を感じながらも、仕事に戻らなければならないことを思い出す。「仕事って、ぼくの赤い風船より大事なの?」と、悲しむプーたち。急いでロンドンに戻ったクリストファー・ロビンは、森に会議の重要な書類を忘れてしまう……。
一方、クリストファー・ロビンの忘れものに気づいたプーと仲間たちは、マデリンの助けを借り、親友のため、初めて“100エーカーの森”を飛び出し、ロンドンへと向かう。クリストファー・ロビンが忘れてしまった、本当に「大切なモノ」を届けるために──

出典:プーと大人になった僕 作品情報

大人になたクリストファーはロンドンのウィンズロウ商事という会社のカバンの製造効率化部門で働いているんだけど、
経費削減の為のめっちゃムズイ効率化案の提出を求められるよ。ちなみに部下と自分のクビがかかってる。
修羅場で始まるのね・・・。

“何もしない”をする

“何もしないをする”という約束

クリストファーロビンは遠くの寄宿学校に入学することになり、プー達とお別れすることになります。
その際の印象的な会話。お互いの「世界で一番好きなこと」の話をしている中で、
クリスタファーロビンは「何にもしないことが好き」と言います。
続いて、寄宿学校に行く自分は忙しくなり、多分これから「何もしない」が出来なくなってしまう、
だからプーは僕がいなくなってもこの場所に来て、「何もしない」してくれ、とお願いします。
これがクリストファーロビンとプーの「何もしないをする」約束です。

「何もしない」って何?

何もしないは最高の何かにつながる

作中で多く語られるキーワードである「何もしない」ことですが、本当に何もせず、ぐうたら寝るとかそういう意味ではなく、「目的のないことをする」「ただ楽しいだけのことをする」といったニュアンスです。仕事を持ち、カバンの製造効率化部門で働いているクリストファーロビンの行動には全て目的があります。

「部門存続のために」
「家族の生活のために」
「未来のもっと豊かな暮らしのために」
「娘が将来いい仕事に就けるように」

責任のある大人として間違った考え方ではないけれど、ずっと先の目的の達成にばかり目が奪われて、目の前にある楽しいことを見られなくなってしまう。そんなクリストファーロビンの前に現れたプーは自由奔放で、目の前の楽しそうなことばかりを見ています。プーが登場して以降、この映画はプーとクリストファーロビンの対比を見せながら展開していきます。



クリストファーロビンとプーの対比

プーさんとクリストファーロビン

風船と書類

クリストファーと再会したプーは移動中に駅で売られている風船を欲しがります。風船なんていらないだろ、と思うクリストファーに対し、プーは「これを持っていると幸せな気分になるんだ」と言います。一方、クリスファーは仕事の書類をいつも大切そうに小脇に抱えて、プーのせいでその書類を無くしそうになった時には激昂します。プーは聞きます。「仕事って、風船よりも大切?」

これは考えさせられるよね。プーにとっては楽しいものや幸せなことこそ価値のある物なんだけど、大人になったクリストファーにとっては使い道のない風船に価値などなくて、仕事に必要な書類こそが大事なものなんだ。
仕事の書類なんて楽しくないのにね・・・。

vs 何もしなければ何も生まれない

それは風船よりも大切?

「何もしないことは最高の何かに繋がる」
これはかつて子供の頃のクリストファーロビンが言い、プーが今でも覚えている言葉です。

「何もしなければ何も生まれない」
これはクリストファーロビンが職場の上司に言われ、今の彼自身が何度も口にする言葉です。

今と昔で、真逆の考え方を持つようになったクリストファーロビン。感覚的なプーの言葉と、合理的なクリストファーの言葉がしばしば対比的に描かれます。プーは作中で「僕は考えることが苦手だから・・・」と自称する通り、頭が良くありません。そのため、作中でクリストファーと対立したり論争になることはありませんが、プーの主張はただ一つ、「楽しくないね。」

楽しいことだけじゃ生きていけないのもまた事実だけど、常に「何かしている」ことを楽しくなさそう、と言われるとウッ、ってなるよね。
どちらも決して間違ってないところがまた葛藤を呼ぶわね。

バランス感覚が大切だと思った

核心には触れませんが、少しだけラストに近いシーンのネタバレになります。

クリスタファーロビンはプー達との再会を経て、最終的に「何もしない」ことの大切さを思い出します。でも、だからと言ってパッパラパーになって仕事を放りだしたりするわけではありません。あくまで現実的に生きていく中で、「何もしない」ことを上手に取り入れます。

私たちは100エーカーの森に住んでいる訳ではないので、毎日ハチミツを取ったり風船を追いかけたりするような暮らしは無理です。時には向き合わなければならない憂鬱なこともあります。でも、常に目的を追った行動ばかりしていると、目の前の赤い風船の価値に気付けないかもしれません。時には「今を生きる」ことを思い出さないとな・・・と思った次第です。

目の前の楽しいことだけ追って幸せになれるなら、僕は仕事辞めて一日中ゲームするけど、それじゃあ幸せになれないもんね。
「何もしない」を上手に取り入れるのが、毎日を楽しく生きるプーさん的秘訣なのかもね。

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